現場は人員不足

今後、多くのホテル新規開業ラッシュが訪れますが、既に人員不足が問題になっているようです。

チェックインの時間になっても、客室清掃が間に合わずご案内ができない。
稼働率90%近くということは、故障部屋や予備部屋を除きほぼ満室でしょうから、毎日が大忙しに違いない。
清掃員の求人募集をかけても、「都心からちょっと離れると集まらない」という話しを聞いたことがあります。確かに、求人検索をするとハウスキーパーの求人募集が多く掲載されています。

ビジネスホテルでも「自動チェックインチェックアウトシステム」を導入していますが、操作が不慣れなご年配の方からは、不満の声も聞こえてきます。

「操作がわからず手間取っていたのに、フロントにいる人は見てみぬふり。声すらかけてくれなかった。。」というもの。

信じがたい事実ですが、求人条件には、「ホテル未経験OK、語学を活かしたい人。。。」が目立つ。外国からのお客様に対応できるスタッフの方が必要であり、接遇マナーは入社後の研修で身につけてもらおうという事だろうか(?)。そして、身につく前に現場に配属されてしまうのだろう。なんとも残念な話である。

外国人雇用で乗り切れるのか?

日本政府の考え方は、高度人材(大卒や同等以上の専門的・技術的知識をもった人)の受け入れしか認めず、単純労働者を目的とする就労は認めないというのが基本スタンスです。

外国人の在留資格は、『出入国管理及び難民認定法』に定められておりますが、行政側の裁量幅が非常に大きく、条件を満たしたら在留資格が得られるというものではないことを先に申しておきます。

では、順番にホテルや旅館などの現場で雇える人材を確認します。

まず身分系の在留資格を持った人です。身分系の在留資格とは、日本人の配偶者等、永住者、永住者の配偶者等、定住者です。

「在留カード」で確認できます。身分系の在留資格保有者は就労制限がありませんので、どのような職種にも就くことができます。ハウスキーパー、レストラン、フロント、コンシェルジュ、ベル、仲居さん他。

次に、留学生です。「留学」の在留資格では、就労は認められておりません。しかし「資格外活動」の許可を得て就労(アルバイト)が可能となりますが、原則、1週間あたり28時間以下(夏期・冬期休暇等別の定めあり)の時間制限があります。また、風営法が適用される職種には就けません。夕方からのフロント業務や、早朝の朝食スタッフなどが考えられます。

最後に、就労系の在留資格です。この判断が非常に難しいのです。在留資格の種類に「技術・人文知識・国際業務」があります。法務省入局管理局が平成27年12月に公表した『ホテル・旅館等において外国人が就労する場合の在留資格の明確化について』でも「技術・人文知識・国際業務」への該当性を審査すると書かれています。

許可が認められた事例として、
*日本において経営学を専攻して大学を卒業した者が、外国人観光客が多く利用する日本のホテルとの契約に基づき総合職(幹部候補生)として採用された後、2ヶ月間の座学を中心とした研修及び4ヶ月間のフロントやレストランでの接客研修を経て、月額約30万円の報酬を受けて、外国語を用いたフロント業務、外国人観光客からの要望対応、宿泊プランの企画立案業務に従事するもの。

これに対し、不許可のケースとして
*日本の専門学校においてホテルサービスやビジネス実務等を専攻し、専門士の称号を付与された者が、日本のホテルとの契約に基づきフロント業務を行おうとして申請があったが、提出された資料から採用後最初の2年間は実務研修として専らレストランでの配膳や客室の清掃に従事する予定であることが判明したところ、これらの「技術・人文知識・国際業務」の在留資格には該当しない業務が在留期間の大半を占めることとなるため不許可となったもの

とあります。
審査の結果「該当性が無い」と判断されました。採用する側は、在留資格の許可要件について正確に把握し、要件に適合する職場への配属および業務内容にて申請する必要があります。

 

自民党「労働力確保に関する特命委員会」

4月26日の日経新聞で、このような記事を見つけました。
概要は、自民党の「労働力確保に関する特命委員会」において、外国人労働者に関し「必要性がある分野について個別に精査して受け入れを進めていくべきだ。」とする提言案を示し、積極的に受け入れる姿勢を示したというもの。

旅館などでも人手不足の分野があると指摘し、「単純労働者」として積極的に受け入れていなかった政府方針の見直しを求めたそうです。

2014年には、外国人建設就労者という新たな制度を設け、「技能実習生」の在留資格で働く際の在留期間も延長しました(時限立法)
※「建設現場で単に働く」というのとは違い、日本での職業訓練を目的としての期限付きの在留資格です。

今後は、ホテルや旅館業でも「日本のおもてなし修得(?)のため。。。」等として、「技能実習制度」が認められるのでしょうか。。。